みなさん、医英検という検定試験をご存知でしょうか。医療に携わっていて英語学習をされている方ならご存知かもしれませんが、実はこちらの検定試験は比較的新しいため、聞いたことはあっても詳細はよくわからない方も多いかと思います。今回はそういった方へ向けて、医英検について試験内容や難易度、受験するメリットなどをわかりやすく説明をしたいと思います。
医英検とは
医英検とは日本医学英語検定試験の略で、日本の医療・医学の国際化を推進することを目的に、2008年から日本医学英語教育学会が主催している医学や治療に特化した英語検定試験のことをいいます。4級(基本級)から、3級(応用級)、2級(プロフェッショナル級)、1級(エキスパート級)まであり1年に1回の開催となり、最近では2022年6月12日に第15回(3級、4級)の試験が終わったところです。2008年にスタートして以来、2018年時点では受験者が3500名に達しています。
また、試験名に医学という言葉が入っているので、医療の知識のみを問われる試験に見えますが、医師や看護師、薬剤師をはじめ医療従事者や医療系学生だけでなく、教育、出版、翻訳、通訳など様々な業種の受験者層が想定されています。医学・医療現場で必要とされる実践的な英語運用能力を総合的に評価されるため、様々な角度から英語力の評価をすることができる試験となっています。このように「医学英語」を冠した検定試験は世界でもほとんど例がないため、貴重な検定試験と言えます。
医英検の難易度と受験資格について
まず、先述の通り医英検には4つの級があります。それぞれの級の難易度や受験資格などを以下にご紹介します。
基本級(4級)
基礎的な医学英語運用能力を有するレベル(医科大学、医療系大学在学、あるいは卒業程度)
特に制約はなく、どなたでも受験できます。
応用級(3級)
英語で医療に従事できるレベル(医師、看護師、医療従事者、通訳、翻訳者など)
特に制約はなく、どなたでも受験できます。
プロフェッショナル級(2級)
英語で論文執筆、学会発表、討論を行えるレベル。
応用級(3級)の取得者。
エキスパート級(1級)
医学英語教育を行えるレベル(プロフェッショナル級(2級)受験者を指導できるレベル)
また、エキスパート級を受験できるのは、日本医学英語教育学会会員で、かつ検定試験プロフェッショナル級(2級)の取得者のみ。
公式: 日本医学英語教育学会
医英検の試験内容や検定料について
次に、各級の試験内容の詳細や時間、検定料などについてご紹介します。プロフェショナル級(2級)とエキスパート級(1級)は申込の時点で必要な書類があります併せてご説明します。
基本級(4級)
筆記試験(90分、60問程度:語彙25問程度、読解25問程度)
*筆記試験はマークシート選択式の試験となります。
検定料 6,000円
応用級(3級)
筆記試験(90分、60問程度:語彙25問程度、読解35問程度)
リスニング試験(30分、15問程度)
*筆記試験はマークシート選択式の試験となります。
検定料 9,000円
応用級の試験は、筆記試験合格でリスニング試験不合格となった場合、準応用級(準3級)として認定されます。また、準応用級合格者がリスニング試験のみ受験する場合の費用は3,000円となります。
プロフェッショナル級(2級)
筆記試験(80分、自由筆記3問)
プレゼンテーション試験(口頭発表10分、質疑応答15分)
検定料 15,000円
プロフェッショナル級は、お申込みの時点での受験申請書以外に、以下の書類も提出する必要があり、試験の審査対象となるものもあります。
・履歴書(英語)
・業績リスト
-英語での論文発表
-英語での学会発表
-その他、英語・医学英語の研究や教育における実績や業績
この二つは採点の対象ではありませんが参考資料となります。
・口頭発表用の資料
-抄録(300words以内)
-発表原稿
-発表スライド
こちらの資料は事前に試験管により審査対象となります。発表のテーマは医学・医療ないしは医学英語に関するものであれば自由となっています。
これからわかるように、応用級(3級)とプロフェッショナル級(2級)は難易度に差が出てきます。
エキスパート級(1級)
面接試験(30分)
医学英語あるいは医学英語教育に関する業績の事前調査
検定料 15,000円
こちらもプロフェッショナル級(2級)同様に、お申込みの時点での受験申請書以外に、以下の書類も提出する必要があります。
・履歴書(英語)
・業績リスト
-英語での論文発表
-英語での学会発表
-その他、英語・医学英語の研究や教育における実績や業績
この二つは採点の対象ではありませんが参考資料となります。
試験内容にある面接試験ですが、これは国際学会で5分間の英語での発表があるという想定でその座長を演じることから始まり、事前に提供される発表内容のスライドの他、当日に渡される発表用スライドを見て、問題点や改良点を述べるなどかなり難易度の高い試験内容となっています。
医英検のおすすめ勉強法
では、実際に基本級(4級)と応用級(3級)の取得のためにはどういった勉強をするといいのでしょうか。
基本級(4級)、応用級(3級)
まずは公式の教本を使って試験対策をすることが一番効率的です。日本医学英語教育学会が「日本医学英語検定試験3・4級教本」を発行しており、3級・4級の試験で出題される問題の傾向対策を勉強することができます。それぞれの級で出題される「語彙問題」「読解問題(長文読解、会話読解)」「プラクティカル問題(写真や図表の読み取り)」「リスニング問題」と回答、解説もありますので、まずはでわからなかった箇所、間違えた箇所を徹底的に復習・暗記をしましょう。
教本の後半には実際に出題された過去問や必須ワード・略語リストが掲載されているので、少なくともここに掲載されている単語は全て覚えて準備することは必須です。リスニング対策では、出版社のホームページより音源をダウンロードして練習しましょう。こちらは、サンプル音源も聴くことができますので、どちらの級を受験するか迷った時は実際に聞いてみてチャレンジする級を決める参考にすることをおすすめします。
また、試験内容でもご紹介したように、4級、3級の筆記試験は「語彙問題」と「読解問題」の構成になっていますので、持っている語彙力によって合否を左右することになります。少なくとも、教本に出てきた知らない単語や記憶が曖昧な単語は、必ず辞書で確認し、繰り返し書きながら音読をして記憶を定着させていくことが大切です。語彙力を鍛えることは、語彙問題だけでなく、読解問題やリスニング問題にも大きく影響してきます。単語は全ての基本です。知らない単語がある文章は読んでも聞いても理解することができません。これを肝に銘じて学習に取り組みましょう!
なお、教本以外で学習を行う場合には医療英語単語に特化した参考書を使って足りない語彙力を強化していきましょう。以下、医英検対策で学習するといい教材をいくつかご紹介します。
■覚えにくく難解な医療英単語を「語幹」や「接頭語」「接尾語」の説明とともに学習できる教材です。ストーリーに合わせて学べるのもなかなか医療英語学習書には珍しく、楽しみながら学習できるかと思います
トシ、1週間であなたの医療英単語を100倍にしなさい。
■全6巻あり、それぞれのパートの中でご自身の足りないと思われるものだけを集中して学習できます。
キクタン メディカル 1.人体の構造編
■こちらも日本医学英語教育学会が編集した教材です。一般的な疾患の説明や基礎的な医療英語をつかった会話などが網羅されています。医療現場で必要な英語の基礎を学べます
医学・医療系学生のための総合医学英語テキスト Step1
エキスパート級(1級)、プロフェッショナル級(2級)
公式の教本はありません。こちらも試験内容でご紹介したようにプロフェッショナル級から突然ハードルが高くなります。1級も2級も実際に学会発表の練習をすることや英語を話すこと自体に抵抗がないように準備しなくてはなりません。したがって、これらの上級を受験する際には、実際に発表スライドを英語で作成、添削をした後に、発表・質疑応答の練習が不可欠です。
医英検を受験するメリット
ここまでは医英検の試験内容などをご紹介してきましたが、医英検を受験することのメリットをご紹介します。ご自身の目的に合ったメリットがあればぜひ医英検の受験にチャレンジしてみてください!
就職・転職に役立つ
医英検は「医学英語」を冠する数少ない検定の一つです。比較的新しい検定ということもあり知名度はそこまで高くありませんが、医療というフィールドにおける知見を広げるために医学英語を勉強したという、その努力の結果を明示することができる資格として、価値があることは間違いありません。履歴書を充実させることは就職や転職に必ず役立ちます。
医療英語を学習するモチベーションになる
いざ、仕事に役立つ英語を勉強しよう!と思っても、明確な目標がないとなかなか学習を続けることができません。これは医療英語だけに関わらず言えることですが、明確な目標や緊急の必要性がない場合には、学習者自身で目標を作ることが英語学習を継続する上で重要になってきます。実際に試験を受けたいと思っているかどうかか、もしくは必要かどうか、ということはあまり関係ありません。まずは、学習をする機会や動機を創出するために、試験に申し込むことが大切なのです。
試験に申し込むという行動がきっかけ(トリガー)となり、試験日までのカウントダウンが始まります。また、受験には少なからず費用がかかりますので、自然とこれを無駄にしてはいけない、という気持ちになりますよね(笑)こういった既成事実を自らつくっていくことにより、はじめはあまり気が乗らないかもしれませんが、学習をするモチベーションになっていきます。
因みに、はじめは気乗りしない学習でも毎日コツコツとやっていくうちに、学習の面白さに気づくことがよくあります。むしろ、そういった面白さや学習を続ける中でしかやる気は起こりません。じっと待っていても、自然とやる気が湧き出てくるわけではないのです。何もやらないということは何も得ないということですので、まずは少しずつでも学習を生活の中に取り入れるイメージを持って学習に取り組んでいくことをおすすめします。
医英検以外の医療英語の試験について
それでは最後に医英検の他に、何か医療に関する英語の資格・試験をご紹介いたします。それぞれの試験には特徴がありますし、難易度もそれぞれです。ご自身の興味のある試験や目的・目標に沿った試験があれば、将来のキャリアのためにもぜひ受験することを検討してみるといいかと思います。
国際医療英語認定試験(CBMS)
国際医療英語認定試験(CBMS)は一般財団法人グローバルヘルスケア財団が主催する試験です。医療に携わる医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、救急救命士など幅広い方が医療や看護の現場、病院などで必要とされる医療英語のスキルアップを図ることを目的に2011年から毎年年に一度実施されています。
試験は合否スタイルではなく、獲得した点数を認定する形式です。また、「CBMS Basic」と「CBMS Advanced」の2種類があります。
<CBMS Basic>
・医療系の学生や医療英語の基礎レベルの方が対象
・リスニング(30分)とリーディング(30分)の2種で選択式
・スコアは400点満点
・受験料8,800円
<CBMS Advanced>
・スキル目標は、外国人患者へ医療行為などの説明をできるか、その家族への基本的な案内、指示、連絡、介助ができるかなど。
・リスニング(60分)とリーディング(60分)の2種で選択式
・スコアは800点満点
・受験料16,500円
公式: CBMS(国際医療英語認定試験)
OET(The Occupational English Test)
OETはThe Occupational English Testの略で、医療従事者へ向けて作られた英語試験です。(実際には受験可能な12種の職種が決まっています)英語が母国でない医療従事者が海外で働くことができる英語力を有するかを図る試験となっています。海外で働きたい方はこちらの試験を受ける必要があるケースも少なくないということです。これまで、海外で働きたいと看護師の方の受験が多かったのですが、2020年3月より中止となっていたUSMLEのStep2 CSが2022年はOETを代替とすることが決まりましたので、今後はアメリカで働きたい医師の方の受験も増えるのではないかと思います。
OETは年間11回の開催されており、日本で受験できます。大阪、東京にある会場にてコンピューターでの受験となります。(紙での受験は大阪会場のみで受験可)
こちらの試験は、リスニング(40分)、リーディング(60分)、スピーキング(20分)、ライティング(45分)の4技能があります。各技能それぞれ500点満点となっており、一般的には海外で働くことを希望する医療従事者に求められる合格ライン(VISA取得に必要とされる)は350点以上です。また、試験は医療現場で起こるコミュニケーションや医療に関する問題などで構成されています。難易度は医英検などに比べるとかなり高くなっていますので、しっかりと対策をして臨む必要があります。(受験する方の職業によってライティングとスピーキングの試験内容が変わります)なお、受験料は587AUD/455USD(約55,000円)となっています。
公式: OET(The Occupational English Test)
医療通訳技能検定試験
医療通訳技能の客観的指標となる検定として始まった通訳の試験です。医療通訳1級と2級があり、それぞれの判定基準は以下となります。
医療通訳2級:健康診断・健診には対応可能レベル
医療通訳1級:医療全般に関われる通訳レベル(重症の病気に対応できる)
また、受験資格については以下の三つのうちどれかに該当しなければいけません。
<医療通訳2級>
①医療通訳スクールの講座修了者
②医療通訳の実務経験1年以上
③試験委員会が前各号と同等と認めたもの
<医療通訳1級>
①医療通訳スクールの講座修了者
②医療通訳の実務経験2年以上
③試験委員会が前各号と同等と認めたもの
また、試験形式は、筆記の一次試験(120分で12問)と面接(ロールプレイ)の二次試験から成ります。筆記試験では医学知識や医療制度、医療通訳者としての倫理などが出題され、ロールプレイでは医療や語学の知識のほか、礼儀や態度、服装なども評価対象となります。
受験料については、一次試験が6, 600円、二次試験が16,500円となります。
公式: 医療通訳技能検定試験
医療英会話技能認定
医療機関の受付(総合案内・外来・会計・各診療科・病棟等)業務における外国人患者対応で必要となる基礎的な英会話力を評価・認定することにより、医療機関の事務スタッフとして求められる英語による外国人患者対応能力の向上を目的とした技能認定試験です。
こちらは、承認を受けた教育機関で所定のカリキュラムで技能習得、修了試験に合格することで技能認定を受けることができます。独学で勉強しなくても、認定されたコースを受講することで基礎的な英会話力を学ぶことができ、技能認定されるので、外国人患者に対応する機会が多い方にとってはチャレンジしやすい試験かと思います。
公式: 医療英会話技能認定
まとめ
今回は医英検についての詳細と、そのほかの医療英語試験についてご紹介しました。医英検の基本級(4級)と応用級(3級)は、受験資格やスピーキングの試験もなく、教本も出版されているため学習しやすいことと、合否がはっきりわかる試験なので取り組みやすい試験となっています。
とはいえ、英語を学ぶということは、試験に合格することが最終目的ではなく、学んだことを使ってコミュニケーションをとることがその先にある目的だと思います。実際に外国人の患者さんを相手にする機会があったり、海外での勤務を視野に入れている方は特にそうだと思いますが、各種医療英語の試験を受験するにあたりインプットした知識をアウトプットして使えるモノに変えていく練習をしていくことが大切です。
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